IT技術の進化に伴い、さまざまな分野でデジタル化が加速しています。しかし保安分野は長く巡視点検が基本とされ、人の目・手に拠る管理からの脱却が課題でした。
その状況に風穴を開け、保安分野の効率化・高度化への牽引が期待されるのが、「スマート保安導入支援事業費補助金」です。高度な保安業務のノウハウを持ちながらも、費用の点で新規性・革新性のある技術開発に踏み込めなかった企業や自治体が、この補助金との出会いで得たもの。それは技術開発のブレイクスルーに留まらず、企業の信頼度アップをも生み出し、次のステージへの大きな足掛かりとなっています。
みなし設置者として風力発電所の運営を行うイオスエンジニアリング&サービス株式会社(本社:東京都千代田区、代表:須藤 豊)は、補助金を利用し、風力発電所運用に最適化した国産統合操業管理システムを構築しました。
風力発電施設は厳格な保守管理が求められるものの、山間や僻地の立地環境も多く、アクセス性や作業の危険度において過酷な業務が強いられてきました。これらを解消すべく遠隔モニタリングや点検作業デバイス等を用いてきましたが、そもそも風車用途に最適化&統合化されたものはなく、風車メーカーの大半を占める海外企業製のツールは、データ格納方法やデータ取得スパン等さまざまな面で国内の保守ニーズにマッチしない点も見受けられて、現場から「国内ニーズに応える使い勝手の良いシステム」の開発が強く求められていました。
同社は、以前同様の補助金事業で採択を受けた実績がある関連会社より情報を得て申請。「①統合SCADAシステム」「②メンテナンス支援ツール」「③電気的CMS(サーモカメラ監視システム)」の3項目を開発しました。
具体的には、風車メーカーごとに異なっていたデータフォーマットを最適化&統合化したことに加え、データ格納方法やデータ取得スパン等を国内ニーズに合わせ統一。過去データ群と整合性を確保し、旧型施設からのデータ取得を実現できたことなどにより、風力発電に特化したデータベースを根幹とした「使い勝手の良いシステム」とすることができました。
国内ニーズに応じられたことで、現場から高い評価を獲得。①統合SCADAシステムは、データ一元化により分析時の業務効率が約25%向上。標準化されていなかった以前に比べて情報交換やデータ転用も容易になりました。また②メンテナンス支援ツールは、作業員のスキルに拠らず作業精度向上・安全性向上につながることを確認。将来的にはツールを活用したリアルタイムでの情報共有により、点検品質向上も望めます。
「この補助金がなければ、もっと内容を絞って進めることになったはず。補助金のおかげで、社内として良い取り組みができ、さらに業界への貢献も望める良い開発に繋がったという実感を得ています」と同社・三上氏は語ります。
将来的には、中小事業者も含め風力発電事業者へ今回システムの導入を推進。並行してデータアナリストの人材育成およびシステム運用体制を整備し、風力発電所全体に資する継続的な保安業務の効率化と高度化をめざしています。