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技術開発のブレイクスルー、会社の信頼度アップをも生む「スマート保安導入支援事業費補助金」の力

IT技術の進化に伴い、さまざまな分野でデジタル化が加速しています。しかし保安分野は長く巡視点検が基本とされ、人の目・手に拠る管理からの脱却が課題でした。
その状況に風穴を開け、保安分野の効率化・高度化への牽引が期待されるのが、「スマート保安導入支援事業費補助金」です。高度な保安業務のノウハウを持ちながらも、費用の点で新規性・革新性のある技術開発に踏み込めなかった企業や自治体が、この補助金との出会いで得たもの。それは技術開発のブレイクスルーに留まらず、企業の信頼度アップをも生み出し、次のステージへの大きな足掛かりとなっています。

●データドリブンな運用をめざす、バイオマス発電所における大規模言語モデルを活用した保安支援システム
「バイオマスパワーテクノロジーズ株式会社」

木質バイオマス発電所の運営管理、保守運用、電力供給を行うバイオマスパワーテクノロジーズ株式会社(本社:三重県松阪市、代表:北角 強)は、補助金を利用し、大規模言語モデルを活用した保安支援システム構築の実証事業を行いました。

バイオマス発電所はカーボンニュートラルな電源であり、ベースロード電源としてエネルギーミックス実現の重要な役割を担っています。また地元の間伐材を用いて地域産業との結びつきも強く、安定電源として社会的な役割を果たしている側面もあります。
しかし同社が取り組む木質バイオマス発電は、他の化石資源を燃料とする火力発電と比較し、燃料の性状(含水率や形状)が入荷の都度異なるため、設備(特に燃料搬送系統、燃焼の平準化)の負担が大きく、これにより年間5件程度の発電停止を伴う突発故障が発生。安定した稼働を継続させるためには、この突発故障を防ぐ、または発生したとしても影響を極力小さくする(発電停止時間を短くする)ことが急務でした。
加えてバイオマス発電所運転の経験豊富な人材発掘も困難で、属人的になりがちな運転員の早期スキルアップにも課題を抱えていました。

このことから同社では、今までのシステム化により蓄積したデータと大規模言語モデル(LLM)を組み合わせることで、保安業務のより⼀層の省力化を図るシステム構築を企画。木質バイオマス発電所に特化した運転支援システム「BMecomo」を共同開発した株式会社BMエコモに協力を仰いで、チャットボットを通じた保安支援システムに取り組んでいます。

現在は既存のデータをもとに質問回答を行う仕組みを構築中ですが、事業を進めるうち、新たな課題ややりたいことが出てきた、と同社の西川氏は語ります。
「燃料性状や自然環境に左右されることの多いベースロード電源において、トラブル解決の方法は数多くあり、ベテラン運転員ごとにその解決の知見も異なります。どの知見を優先して表示させるか、またどのような条件で回答分岐を導くかなど悩みどころもあります。さらに、こんなことをやらせると良いのではという新しいアイデアも。たとえばトラブル対応でチャットを利用したら、時期を記憶し、次回の点検時期を知らせるアラートを発出することや、人力では困難な定期点検審査の入力補助などへの活用も検討しています」

定量的な効果としては、「必要情報検索完了までの時間削減 令和4年度実績:30分/件 ⇒ 目標::3分/件」や「再発防⽌策の社内通知完了までの期間削減 令和4年度実績:3日/件 ⇒ 目標:1日/件」などを据え、定性的効果としては、データドリブンな発電所運営という社内の意識向上をめざしています。

弊社設立当時の十数年前を考えると、バイオマス発電所の成長は著しく、BMecomoのような運転支援システム(遠隔監視システム)は今後さらに増加していくことが予想されます。
「BMecomo」のシステム開発に取り組み始めて以来、月2~3回あった西川氏への緊急対応依頼が今月は1度も発生していないとのこと。西川氏自身、この取り組みへの静かな手応えを感じています。

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