TOPページへ

BLOG
ブログ

技術開発のブレイクスルー、会社の信頼度アップをも生む「スマート保安導入支援事業費補助金」の力

IT技術の進化に伴い、さまざまな分野でデジタル化が加速しています。しかし保安分野は長く巡視点検が基本とされ、人の目・手に拠る管理からの脱却が課題でした。
その状況に風穴を開け、保安分野の効率化・高度化への牽引が期待されるのが、「スマート保安導入支援事業費補助金」です。高度な保安業務のノウハウを持ちながらも、費用の点で新規性・革新性のある技術開発に踏み込めなかった企業や自治体が、この補助金との出会いで得たもの。それは技術開発のブレイクスルーに留まらず、企業の信頼度アップをも生み出し、次のステージへの大きな足掛かりとなっています。

●風力発電所運用に最適化した国産統合操業管理システムを構築
「イオスエンジニアリング&サービス株式会社」

みなし設置者として風力発電所の運営を行うイオスエンジニアリング&サービス株式会社(本社:東京都千代田区、代表:須藤 豊)は、補助金を利用し、風力発電所運用に最適化した国産統合操業管理システムを構築しました。

風力発電施設は厳格な保守管理が求められるものの、山間や僻地の立地環境も多く、アクセス性や作業の危険度において過酷な業務が強いられてきました。これらを解消すべく遠隔モニタリングや点検作業デバイス等を用いてきましたが、そもそも風車用途に最適化&統合化されたものはなく、風車メーカーの大半を占める海外企業製のツールは、データ格納方法やデータ取得スパン等さまざまな面で国内の保守ニーズにマッチしない点も見受けられて、現場から「国内ニーズに応える使い勝手の良いシステム」の開発が強く求められていました。

同社は、以前同様の補助金事業で採択を受けた実績がある関連会社より情報を得て申請。「①統合SCADAシステム」「②メンテナンス支援ツール」「③電気的CMS(サーモカメラ監視システム)」の3項目を開発しました。
具体的には、風車メーカーごとに異なっていたデータフォーマットを最適化&統合化したことに加え、データ格納方法やデータ取得スパン等を国内ニーズに合わせ統一。過去データ群と整合性を確保し、旧型施設からのデータ取得を実現できたことなどにより、風力発電に特化したデータベースを根幹とした「使い勝手の良いシステム」とすることができました。

国内ニーズに応じられたことで、現場から高い評価を獲得。①統合SCADAシステムは、データ一元化により分析時の業務効率が約25%向上。標準化されていなかった以前に比べて情報交換やデータ転用も容易になりました。また②メンテナンス支援ツールは、作業員のスキルに拠らず作業精度向上・安全性向上につながることを確認。将来的にはツールを活用したリアルタイムでの情報共有により、点検品質向上も望めます。

「この補助金がなければ、もっと内容を絞って進めることになったはず。補助金のおかげで、社内として良い取り組みができ、さらに業界への貢献も望める良い開発に繋がったという実感を得ています」と同社・三上氏は語ります。

将来的には、中小事業者も含め風力発電事業者へ今回システムの導入を推進。並行してデータアナリストの人材育成およびシステム運用体制を整備し、風力発電所全体に資する継続的な保安業務の効率化と高度化をめざしています。

●「地盤・パネル点検システム」開発
~太陽光発電/地盤・パネル点検の保安業務を約90%省力化~
「日本グリーン電力開発株式会社」

再生可能エネルギー専業の発電事業者・日本グリーン電力開発株式会社(本社:東京都千代田区、代表:君塚 元)は補助金を利用し、太陽光発電の保守点検において、目視を上回る精度を担保し省力化・保安力の維持向上・コスト削減に寄与する地盤・パネル点検システム「REMOKEN」を開発しました。

月次/年次の地盤・パネル点検は目視による巡視点検が基準とされ、足場の悪い中での目視点検は非常に時間を要します。さらに災害が頻発する近年では、この立地環境に阻まれ、災害時異常発生の把握自体にも時間がかかるという問題も孕んでいます。
判断の属人化による点検品質のバラツキや、将来的な人材不足、高齢化といった人的要素に関する長期的懸念もあります。

これら問題を解決するソリューションとして同社が開発を進めていたのが、ドローンで取得したデータによりAIが異常の有無を判定する、地盤点検・パネル点検のシステム「REMOKEN」でした。ドローン購入、システム構築等の費用捻出に苦慮し実証検証を実施できずにいた中、どうにか前進させたいとの思いから補助金を探していたところ当該補助金を知り申請、採択され、開発を進めることが可能になりました。

実証検証は、面積や環境の異なる自社管理の5発電所にて実施。従来通りの目視による点検結果と「REMOKEN」にて得た結果を比較、品質や省力化の状況を確認しました。
「REMOKEN」は、地盤・パネルの両点検において目視点検を超える品質を実現。例えばホットスポットやクラスタ異常といった目視による発見が不可能である不具合、発電電力量に影響するパネル上の汚れまでも検出することが可能となりました。また地盤点検では、足場等の問題で進入できなかった箇所も安全を確保しながら点検することができ、AI解析により点検品質の平準化を可能にしました。
これにより①地盤点検を約90%省力化 ②パネル点検を約90%省力化 ③レポート作成業務を約40%省力化し、コスト削減が期待できます。

「今回、補助金でドローンを購入し実証事業に進めたことで、事業が加速できた」と同社・君塚健太氏は語ります。補助金はドローン購入のほか、ユーザーインターフェイスの開発等にも活用されています。

同事業は2023年5月から、自社および他社が保安管理する太陽光発電所施設への順次導入しています。AIにおける異常検出の精度向上をめざして、引き続き学習、チューニング、検証を実施するとともに、スマート保安に必要な機能追加も検討しています。
将来的には各種データとAI分析結果を組み合わせ、異常を予兆検知するシステム開発を推進、太陽光発電におけるCBM発展に資するものとしたいと同社は願っています。

執筆:株式会社グロップ 平田有紀

PAGE TOP